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感想の練習

アリス・イン・ワンダーランド - 少女は問題と向かい合い、戦うことを選ぶ。

 

アリス・イン・ワンダーランド ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

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 これもディズニーだと最近知りました。

あらすじ

不思議の国での冒険から13年後。19歳となり、最愛の父親を亡くしたアリス・キングスレーはパーティに出席していた。だが、このパーティーはアリスの母と姉が極秘裏 に企画したアリスの婚約パーティだった。アリスは貴族の御曹司・ヘイミッシュから求愛されるが、突然の出来事に混乱してその場から逃げ出してしまう。

そんな時、アリスはチョッキを着た白ウサギを追って、幼少時代に訪れた不思議の国へ再び迷い込み、そこでかつて出会ったマッドハッターやチェシャ猫達と再会。だが、不思議の国は13年前とは一変しており、赤の女王に支配された暗い世界と化していた。

アリスはかつてここを訪れた事を夢だと考え記憶を失くしていたが、自分が預言書に記されている「救世主」だと知らされ、この世界を赤の女王の支配から解放するため、赤の女王の妹である白の女王やマッドハッター達の力を借りて、赤の女王に戦いを挑むことになる。

wikipediaより引用)

 

 これもディズニー作品だと最近になって知った。

不思議の国のアリス」も「鏡の国のアリス」もぼんやりとしか具体的な内容は知らないのだが、それでも十分に楽しめた。

基本的に字幕で見たいのだが、藤原啓治とてらそままさきがいたので負けて吹替で見た。てらそまは一瞬だったけどハートのジャックの藤原啓治は大変良かった。やはり藤原啓治には悪役をさせるべき。

 

以下、ネタバレも含む。

ワンダーランドの奇妙な世界観とそれを彩る奇妙なキャラクターたちの造形、キャラ付け、演技どれを取っても完成度が高い。わくわくさせられた。

監督はこれを「強さを取り戻す物語」と言っているが、このテーマはとても良く、またとてもわかりやすく描かれていたのが好ましかった。幼いころから変わり者であるアリスは今も変わり者であるけれど、四方八方からかけられる「普通でいろ」という圧力の存在には既に気がついていて、居心地悪く暮らしている。無理をして普通にするのは嫌で、自分を押し通したいけれど、そうすることもどこか躊躇われる。そして大勢の前でのプロポーズに思わず逃げ出してしまう。

逃げ出した先のワンダーランドでも、これは夢だと頻りに自分へ言い聞かせている。そうして記憶のない彼女を見て、住人たちも「これは違うアリスだ」と言う。

アリスがジャバウォックを殺すという予言を否定しながらも、捕われたマッドハッターを追って赤の女王の城へ入り込み、ジャバウォックを倒すヴォーパルの剣を奪って白の女王の城へと行くものの、改めて「戦うか否か」と問われると、やはり、逃げ出してしまう。この反応はリアルで、共感できる。19歳の少女が、突然剣でドラゴンと戦えと言われても困るし、殺せなどとはさらに困る。なにより恐ろしい。当然のことだ。

そこから戦うことを決意するまでは割合あっさりと描かれているが、結局のところそれは新しく手にする力でなく、「過去の己が持っていた強さ」であったから、比較的取り戻すのは容易であったということだろう。それでも直面したジャバウォックが恐ろしいことには変わりないが。

物事に向かい合うことを決めたアリスは、ジャバウォッキーと戦い、マッドハッターとお別れをし、戻った現実でプロポーズに返答をする。そして大勢の客の前でスカートを捲り足を出してファッターワッケンを踊って見せる。客らからすればはしたないその振る舞いは、彼女にとって自分の生きたいように生きるという答えであるのだろう。

「少女が生きたいように生きるようになるための物語」という大枠としては、塔の上のラプンツェルアナと雪の女王とも同じで、これらの流れがあったからこそ、アナ雪でそれが爆発したのだろう。

 

どのキャラも個性的でありながら、象徴的、記号的になっていない点もよい。

特にわかりやすいのは白の女王であると思う。ただの美しく誰からも愛され殺生を嫌う善なる女王、というわけではない。優雅さも優しさも嘘ではないが、殺生を拒む様子からはどこかわざとらしさが感じられる。必要であれば殺すことはできるのだろう、嫌悪感は自然的なものというよりも、「持つべき」という思想の上にあるように見えた。

癇癪もちの子供らしい赤の女王も、傍若無人に振舞う裏には不安や大きな頭へのコンプレックスがあり、その末でハートのジャックへ「あなたの言う通りだった、愛されるよりも恐れられるほうが簡単」と言う台詞はどこか物悲しい。悪行三昧であることは事実なのであれだが。

ハートのジャックはなぜ赤の女王の下にいたのだろう? 謎。

ハートのジャックと藤原啓治はぴったりで大変よかった。ハートのジャックの赤の女王にごまを擦りつつアリスに迫ったり、最後二人きりでの追放を言い渡されて女王を殺そうとしたりいっそ殺してくれとせがんだりする底の浅い感じはとても好き。

蛹になったアブソレムと再会するのがワンダーランドでなく、現実に戻ってからというのがまたお約束ながら、空想からできた存在でありながらワンダーランドの実在を思わせて、余韻があって良い。